「今の仕事は、自分に向いていないのではないか」
働いていると、一度はそう感じることがあると思います。
仕事でミスが続いたとき。周囲の人が簡単にできていることが、自分には難しく感じられるとき。努力しているのに、なかなか成果が出ないとき。
あるいは、仕事そのものはできていても、毎日が苦しく、やりがいを感じられないとき。
「向いていない」という言葉には、いくつかの異なる意味が含まれています。
本当に必要な能力が合っていない場合もあれば、仕事の進め方や職場環境が自分に合っていない場合もあります。
また、仕事内容ではなく、上司や同僚との関係、仕事量、勤務条件、仕事の意味に違和感を持っているのかもしれません。
私自身、これまで人事や組織運営、さまざまな仕事に関わる中で、「向いていない」と感じる原因を一つの言葉で片づけないことが大切だと感じてきました。ひとそれぞれ悩みの根源は異なる、これを感覚的にしっておくことが相手への配慮につながるのではないかと思います。
私が様々なカウンセリングの場面で感じたこととして、働く人が悩むポイントは、以下の6つに整理されます。
1.求められている「役割」は合っているか
最初に考えたいのは、自分に求められている役割が合っているかどうかです。
同じ職種であっても、会社によって期待される役割は異なります。
新しいことを考え、仕組みをつくることを求められる人もいれば、決められた手順を正確に実行することを求められる人もいます。
人をまとめる役割が中心の人もいれば、専門性を高め、一人で成果を出すことが期待される人もいます。
自分は、人を支えることが得意なのか。前に立って周囲を動かすことが得意なのか。決められたことを安定して進めることが得意なのか。それとも、まだ形になっていないものをつくることが得意なのか。
役割が合っていないと、能力がないのではなく、強みを発揮する機会が少ないだけということがあります。
2.日々の「業務内容」は合っているか
次に、実際に行っている業務を分けて考えてみます。
「営業が向いていない」と感じていても、苦手なのは新規開拓なのか、電話営業なのか、短期的な数字を追うことなのか、あるいは商品そのものに納得できないことなのかもしれません。
「事務が向いていない」と感じていても、単純作業が苦手なのか、細かな確認作業が多すぎるのか、人との調整業務に負担を感じているのかによって、必要な対応は変わります。
仕事を大きな一つのかたまりとして見るのではなく、どの業務で負担を感じ、どの業務では比較的力を発揮できるのかを整理してみることが大切です。
向いていないのは職種全体ではなく、その中の一部の業務だけかもしれません。
3.職場の「人間関係」はどうか
仕事が向いていないと感じるとき、実は仕事内容ではなく、人間関係が原因になっていることがあります。
上司に相談しにくい。
質問をすると嫌な顔をされる。
同僚と協力しにくい。
自分の意見を出しても聞いてもらえない。
職場で常に緊張している。
このような環境では、どれほど仕事内容が自分に合っていても、力を発揮することは難しくなります。
反対に、上司や同僚が変わっただけで、同じ仕事を前向きにできるようになる人もいます。
人間関係の問題には、単なる相性の違いもありますが、無視できないハラスメントや不適切な対応が含まれている場合もあります。
自分の受け止め方だけの問題だと決めつけず、何が起きているのかを具体的に確認する必要があります。
4.仕事の「負荷」は適切か
能力や適性を考える前に、仕事の負荷が過剰になっていないかも確認したいところです。
仕事量が多すぎる。
期限が短すぎる。
責任に対して権限がない。
常に急な対応を求められる。
休んでも仕事が減らない。
このような状態では、向いている仕事であっても苦しくなります。
疲れ切っていると、普段ならできる判断や工夫もできなくなります。
その状態で「自分はこの仕事に向いていない」と結論づけるのは、少し早いかもしれません。
業務量や役割分担を見直すことで改善できるのか。周囲に相談できるのか。休養が必要なのか。
まずは、自分の能力ではなく、環境の負荷に問題がないかを確認することが大切です。
5.勤務時間や待遇などの「条件」は合っているか
仕事内容や人間関係に問題がなくても、勤務条件が合っていない場合があります。
勤務時間が長い。
通勤時間が負担になっている。
給与と責任のバランスが合わない。
休日や休暇の取り方が自分の生活と合っていない。
勤務地や働く時間を調整できない。
こうした条件は、働き続けるうえで重要な要素です。
「仕事なのだから我慢すべき」と考えすぎると、生活全体が崩れてしまうことがあります。
特に、家族との時間、健康、睡眠、将来の学びなど、自分が大切にしたいものとのバランスを考える必要があります。
条件が合っていないことは、甘えではありません。
長く働き続けるために、自分に必要な条件を把握することは、キャリアを考えるうえで大切な作業です。
6.その仕事に「意義」を感じられるか
最後に、その仕事に意味や納得感を持てているかを考えます。
給与を得るために働くことは、もちろん大切です。
しかし、それだけでは長期間働き続けることが難しい場合もあります。
誰の役に立っているのか分からない。
自分の仕事が何につながっているのか見えない。
会社の考え方に納得できない。
将来の成長や可能性を感じられない。
このような状態では、仕事を続ける理由を見失いやすくなります。
反対に、仕事が大変でも、誰かの役に立っている実感や、自分なりの意味を感じられると、踏ん張れることがあります。
意義の感じ方は人によって違います。
社会的に評価される仕事でなくても、自分にとって大切な意味があれば、働く力になります。
「向いていない」は、自己否定ではない
今の仕事が向いていないと感じたとき、すぐに「自分の能力が低い」と考える必要はありません。
役割が合っていないのかもしれません。
業務内容の一部が合っていないのかもしれません。
人間関係や仕事量に問題があるのかもしれません。
勤務条件や仕事の意義に納得できていないのかもしれません。
大切なのは、「向いていない」という感覚を、具体的な言葉に置き換えることです。
何がつらいのか。
何が合っていないのか。
反対に、どのような場面では力を発揮できているのか。
そこを整理すると、今の職場で改善できることと、環境を変えたほうがよいことが見えてきます。
すぐに辞めるか、我慢するかの二択ではない
仕事が向いていないと感じたとき、選択肢は「辞める」か「我慢する」だけではありません。
上司に相談する。
業務の一部を調整してもらう。
役割を変更する。
部署異動を検討する。
必要なスキルを学ぶ。
自分に合う職場を探す。
さまざまな方法があります。
もちろん、心身に深刻な影響が出ている場合や、ハラスメントなど明らかな問題がある場合は、無理に適応しようとする必要はありません。
環境を離れることが、自分を守るために必要な場合もあります。
自分に合う働き方を見つけるために
「向いている仕事」は、最初から一つに決まっているものではないと思います。
経験を重ねる中で、自分が力を発揮しやすい役割や、苦手になりやすい環境が分かってきます。
向いていないと感じた経験も、自分を知るための大切な材料になります。
今の仕事が向いていないのかもしれない。
そう感じたときは、まず次の6つを整理してみてください。
役割は合っているか。
業務内容は合っているか。
人間関係に問題はないか。
負荷は適切か。
勤務条件は合っているか。
仕事に意義を感じられているか。
仕事との違和感を、漠然とした自己否定のままにしないこと。
自分が何を求め、どのような環境で力を発揮できるのかを整理すること。
それが、今の仕事を見直すときにも、次のキャリアを選ぶときにも、最初の一歩になるのではないでしょうか。
