「人手」ではなく、一人の働く人として考える
街のコンビニや飲食店だけでなく、製造、建設、介護、宿泊、ITなど、さまざまな職場で外国人が働く姿を見かけるようになりました。
厚生労働省によると、2025年10月末時点の外国人労働者数は257万1,037人。前年から約27万人増え、過去最多となっています。外国人を雇用する事業所も37万1,215所と過去最多です。
さらに、「専門的・技術的分野の在留資格」で働く人は86万5,588人となり、前年比20.4%増えています。外国人雇用は、もはや一部の業種だけの話ではありません。
こうした数字を見ると、日本の職場そのものが少しずつ変わっていることを感じます。
人手不足だから外国人を採用する
外国人雇用について語られるとき、よく聞くのが「人手不足」という言葉です。
働く人が集まらない。
若い人が少なくなっている。
採用しても定着しない。
だから外国人を採用する。
企業経営を考えれば、ごく自然な流れなのだと思います。
ただ、少し気になることがあります。
それは、いつの間にか外国人が「足りない人手を補う存在」だけになっていないだろうか、ということです。
「何人採用できるか」
「何年働いてもらえるか」
「どの仕事を任せるか」
もちろん、企業にとってどれも大切なことです。
でも、そこで働く本人から見れば、少し違う景色が見えているかもしれません。
外国人にも、それぞれの人生がある
外国人という言葉でひとまとめにされますが、当然ながら一人ひとり違います。
得意なことも違えば、苦手なことも違う。
仕事に求めるものも違う。
家族についての事情もある。
将来、日本で暮らしたい人もいれば、母国に戻りたい人もいるでしょう。
「もっと技術を身につけたい」
「将来は管理する仕事をしてみたい」
「今とは違う仕事にも挑戦したい」
そんな希望を持っている人もいるはずです。
これは、日本人と何も変わりません。
ところが外国人雇用になると、日本語教育、生活支援、在留資格、業務教育といった「受け入れるための支援」に目が向きがちです。
もちろん、それらは必要です。
そのうえで、もう少し先にある、
「この人は、ここでどんな働き方をしたいのだろう」
という視点も必要になってくるのではないでしょうか。
「育成」という言葉について考える
2027年4月1日からは、技能実習制度に代わって育成就労制度が始まります。出入国在留管理庁によると、新制度は日本の人手不足分野における「人材育成」と「人材確保」を目的とし、原則3年間の就労を通じて特定技能1号の技能水準を目指す制度です。
また、一定の条件のもとで、本人の意向による転籍も認められる仕組みになります。
もちろん、育成就労制度は外国人雇用すべてを対象とする制度ではありません。
それでも、「育成」という言葉について考える良い機会になるように思います。
仕事を教えること。
日本語を覚えてもらうこと。
技能を身につけてもらうこと。
それも育成です。
しかし、本当の意味で人を育てるということは、それだけなのでしょうか。
本人が何を得意としているのか。
どんな仕事を経験したいのか。
何に困っているのか。
これからどんな働き方をしたいのか。
そうしたことについて話すことも、育成の一つなのではないかと思います。
日本人と外国人を分けすぎない
外国人を雇用すると、「外国人向けに何をすればいいか」と考えがちです。
しかし、もしかすると必要なのは、外国人だけに特別な仕組みをつくることではないのかもしれません。
上司と話せる。
困ったときに相談できる。
仕事についてフィードバックを受けられる。
自分の希望や将来について話す機会がある。
こうしたことは、本来、日本人社員にも外国人社員にも必要なものです。
違いを理解することは大切です。
文化も言葉も生活背景も違う以上、配慮しなければならないことはあります。
でも、違いばかりを見てしまうと、「外国人」という属性が先に立ってしまいます。
その前に、一人の働く人がいる。
この順番を忘れないことが大切なのではないでしょうか。
「何人採用するか」の、その先へ
外国人労働者が257万人を超えた現在、外国人雇用はこれからさらに身近なものになっていくでしょう。
だからこそ、これから企業に問われるのは「外国人を採用するか、しないか」だけではないように思います。
採用した人が、
どんな仕事を経験し、
何を身につけ、
職場でどんな関係をつくり、
その先にどんな未来を描けるのか。
そこまで考えることが、これからの外国人雇用には必要になっていくのではないでしょうか。
人手が足りないから、人を採る。
そこからもう一歩進んで、
一人の人が働く場所として、職場を考える。
外国人雇用が当たり前になりつつある今、日本の職場に求められているのは、そんな視点なのかもしれません。
