本人と組織の不一致という視点からの理解
最近、「退職代行」という言葉を目にする機会が増えました。
退職代行とは、本人に代わって会社へ退職の意思を伝えるサービスです。某退職代行会社の不祥事により少しトーンダウンしている感じもありますが、今では若手社員や新卒社員の利用も話題になり、働き方や組織との関係を考えるうえで、無視できないテーマになってきました。
この話題に触れると、つい「なぜ自分で言えないのか」「社会人としてどうなのか」という見方になりがちです。
もちろん、本来であれば退職の意思は、本人と会社の間で適切に伝えられることが望ましいと思います。
ただ、退職代行を使う人を一方的に責めるだけでは、見落としてしまうものがあります。
退職代行は、問題の原因というより、すでに本人と組織の関係性が大きく崩れていたことを示す「結果」なのかもしれません。
本人にとっては、ある日突然辞めたくなったわけではないのだと思います。
入社前に聞いていた仕事内容と違う。
上司や職場との相性が合わない。
相談しても受け止めてもらえない。
仕事の負荷が大きすぎる。
自分の将来像と今の働き方が結びつかない。
こうした小さな違和感が積み重なり、やがて「もう直接話すことも難しい」と感じてしまう。
その先に、退職代行という選択肢が出てくるのではないでしょうか。
一方で、企業側から見れば「突然辞められた」と感じるかもしれません。
しかし、本人の中では、かなり前からサインが出ていた可能性があります。
元気がなくなる。
発言が減る。
相談が減る。
評価面談で本音が出なくなる。
職場内の関係性から少しずつ距離を置く。
これらは、本人と組織の間に何らかの不一致が生じているサインかもしれません。
キャリアに違和感があるとき、多くの人は「辞めるか、残るか」の二択で考えてしまいます。
しかし、本来はもっと多くの選択肢があります。
今の職場で役割を見直す。
働き方や負荷を調整する。
上司や部署との関係性を整理する。
副業や学び直しを始める。
転職を考える。
独立を検討する。
暮らす場所や働く場所を変える。
退職は、あくまで選択肢の一つです。
大切なのは、退職する前に、あるいは退職される前に、本人が何に違和感を持っているのかを整理することだと思います。
それは能力の問題なのか。
仕事内容の問題なのか。
人間関係の問題なのか。
負荷の問題なのか。
働く条件の問題なのか。
それとも、その仕事に意味を感じられなくなっているのか。
そこを分けて考えないまま離職してしまうと、次の職場でも同じような違和感を抱える可能性があります。
退職代行という現象は、働く人と組織の間にある違和感が、限界に近い形で表面化したものとも言えるのではないでしょうか。
だからこそ、本人も企業も、「辞める前」「辞められる前」に、小さな違和感に気づく機会を持つことが大切だと思います。
健康診断で身体の状態を確認し、予防や改善につなげるように、キャリアにも、今の状態や環境との相性を客観的に見つめ直す機会があってよいはずです。
退職代行を必要とするほど追い込まれる前に。
社員が突然離れてしまう前に。
一度立ち止まり、仕事・役割・組織・暮らしとの関係を見つめ直す。
そのようなキャリア相談の形が、これからの社会には必要なのではないかと感じています。
