ー向き・不向きを決める前に、見たいものー
最近、「適職診断」や「キャリア診断」という言葉を目にする機会が増えました。
自分に向いている仕事は何か。
今の仕事は合っているのか。
転職するなら、どんな職種がよいのか。
これから何を学べばよいのか。
こうした問いに対して、診断ツールはとても分かりやすい入口になります。
いくつかの質問に答えると、自分のタイプや強み、向いていそうな仕事が表示される。
なんとなく感じていたことが言葉になったり、自分では気づいていなかった傾向が見えたりすることもあります。
自己理解のきっかけとして、診断やアセスメントはとても役に立つものだと思います。
ただ一方で、診断結果を読むときには、少し注意も必要です。
それは、結果をそのまま「答え」として受け取りすぎてしまうことです。
「あなたはこの仕事に向いています」
「この職種は向いていません」
「このタイプだから、この働き方が合っています」
こう言われると分かりやすい反面、自分の可能性を狭めてしまうことがあります。
人のキャリアは、ひとつの診断結果だけで決まるほど単純ではありません。
たとえば、ある項目が高く出たとしても、それがそのまま「今後も続けたいこと」とは限りません。
自然にできることでも、過去にやりすぎて疲れている場合があります。
周囲から期待され続けた結果、自分でも「得意なこと」だと思い込んでいる場合もあります。
できるけれど、もう仕事の中心には置きたくない。
そういうこともあります。
反対に、診断結果が低く出た項目も、すぐに「向いていない」と決める必要はありません。
経験が少ないだけかもしれません。
これまでの環境では試す機会がなかっただけかもしれません。
本当は関心があるけれど、まだ自信がないために低く出ているのかもしれません。
つまり、診断結果で大切なのは、点数の高い・低いそのものではなく、その結果を見たときに自分がどう感じるかです。
「やっぱりそうだ」と納得するのか。
「意外だけど、思い当たる」と感じるのか。
「できるけれど、今後もやりたいわけではない」と感じるのか。
「低く出たけれど、本当は少し気になっている」と感じるのか。
その反応の中に、キャリアを考えるヒントがあります。
適職診断を読むときには、少なくとも3つを分けて考えるとよいと思います。
一つ目は、できることです。
これまでの経験や得意分野、自然にやってきたことです。
二つ目は、やりたいことです。
興味や関心、これから大切にしたい方向性です。
三つ目は、続けられる条件です。
働く環境、人間関係、負荷、生活とのバランス、報酬や時間の条件です。
この3つは、似ているようで違います。
できるけれど、やりたいとは限らない。
やりたいけれど、今すぐ自然にできるとは限らない。
できるし、やりたいけれど、今の生活条件では続けにくいこともある。
キャリアの悩みは、この3つがずれているときに生まれやすいのだと思います。
たとえば、仕事はできている。
周囲からも評価されている。
でも、自分の中ではやりがいや意味を感じにくくなっている。
この場合、問題は能力不足ではなく、価値観や役割とのズレかもしれません。
あるいは、やってみたい仕事がある。
けれど、経験もスキルもまだ足りない。
その場合は、向いていないと決める前に、小さく試す、学ぶ、補助的な役割から関わるという方法もあります。
診断結果は、こうした整理をするための材料になります。
大切なのは、結果を見てすぐに、
「向いている」
「向いていない」
と決めることではありません。
むしろ、次のように問い直すことです。
なぜ、この項目が高く出たのか。
それは今後も使いたい力なのか。
周囲から期待されてきただけではないか。
低く出た項目の中に、本当は気になっているものはないか。
今の違和感は、仕事そのものではなく、環境や役割との不一致ではないか。
診断は、答えを出すものというより、問いを立てるものです。
自分が何を大切にしたいのか。
何なら自然に力を出せるのか。
どんな環境なら続けられるのか。
何を学べば、次の選択肢が広がるのか。
そうした問いが生まれたとき、診断結果は単なる点数やタイプではなく、自分と仕事の関係を見つめ直す入口になります。
適職診断は便利です。
けれど、結果だけで人生を決める必要はありません。
大切なのは、診断結果をきっかけに、自分の言葉で考えること。
向き・不向きを決める前に、自分と仕事との関係を丁寧に見直すこと。
その積み重ねが、自分らしい働き方を整える第一歩になるのだと思います。
