AIを仕事で使うことが、少しずつ特別なことではなくなってきました。
文章を作る。
情報を整理する。
アイデアを出す。
資料のたたき台を作る。
これまで人が時間をかけて行っていた仕事の一部を、AIが短時間で手伝ってくれるようになっています。
便利になる一方で、
「自分の仕事も、いずれAIに置き換わるのではないか」
そんな不安を感じる人もいるかもしれません。
特に40代、50代になると、
「これからAIを一から勉強しなければいけないのか」
「若い世代についていけるだろうか」
と、少し焦ることもあるでしょう。
でも、AIについて考えるとき、私は少し違う問いを持ってもいいのではないかと思っています。
「AIに仕事を奪われないために何を身につけるか」ではなく、「自分の仕事の何をAIに任せ、何を自分が担いたいのか」。
そんなふうに考えてみることです。
まず、自分の仕事を分解してみる
一つの「仕事」の中には、実はいろいろな作業があります。
例えば管理職の仕事なら、
会議資料を作る。
数字を整理する。
報告書を書く。
部下と面談する。
問題が起きたときに判断する。
関係者の意見を調整する。
これらはすべて「管理職の仕事」ですが、必要とされる力は同じではありません。
資料作成や情報整理などは、これからAIがかなり助けてくれるでしょう。
一方で、
「この人は、本当は何に悩んでいるのだろう」
と相手の表情や言葉の奥を考えること。
数字だけでは判断できない状況で、これまでの経験をもとに決断すること。
対立する人たちの間に入り、少しずつ関係を整えていくこと。
こうした仕事まで、すべて同じように考える必要はありません。
大切なのは、「自分の仕事」という大きな塊で考えるのではなく、仕事を一度分解してみることなのだと思います。
経験は、AIと競争するものではない
40代、50代になると、多くの人が20年、30年という仕事の経験を持っています。
成功した経験だけではありません。
失敗した経験。
難しい上司や部下と仕事をした経験。
思い通りにならなかったプロジェクト。
お客様から厳しい言葉をもらった経験。
そうした一つひとつが、判断の土台になっています。
ところがAIの話になると、なぜか私たちは、それまで積み重ねてきたものを横に置いて、
「新しい技術をどれだけ使えるか」
だけで自分の価値を測ってしまいがちです。
もちろん、AIを使えるようになることは大切です。
でも、若い人と同じ使い方を競う必要はないのではないでしょうか。
例えば、長年営業をしてきた人なら、AIに提案書のたたき台を作ってもらいながら、
「このお客様には、この表現では伝わらない」
と判断できる。
人事経験のある人なら、AIに面談項目を整理してもらいながら、
「この人には、今日はこの質問をしない方がいい」
と判断できる。
AIが出した答えに、経験を重ねる。
そんな使い方もあると思います。
「できること」より「担いたいこと」を考える
もう一つ、考えてみたいことがあります。
AIによって仕事が効率化されると、「人にしかできない仕事は何か」という話がよく出てきます。
でも、私はもう少し自由に考えてもいいと思っています。
「人にしかできないからやる」のではなく、「自分は何を担いたいのか」。
人と話すことが好きな人もいます。
一人でじっくり考えることが好きな人もいます。
誰かを育てることにやりがいを感じる人もいれば、専門的な仕事を深く掘り下げたい人もいます。
AIによって仕事の一部を任せられるようになるのであれば、これまで「やらなければならなかった仕事」を少し減らして、自分が本当に担いたい仕事に時間を使える可能性もあります。
そう考えると、AIは働き方を脅かすものではなく、自分の仕事を見直すきっかけにもなります。
AI時代だからこそ、一度働き方を整える
これから先、AIはもっと身近になっていくでしょう。
新しいサービスが出るたびに、そのすべてを追いかけようとすると疲れてしまいます。
だからこそ、ときどき立ち止まって、
「今の仕事の中で、AIに任せてもいいことは何だろう」
「自分の経験が活きるのはどんな場面だろう」
「これから自分は、どんな仕事を担っていきたいだろう」
と考えてみる。
AI時代に必要なのは、新しいスキルを増やし続けることだけではないのかもしれません。
AIに何を任せ、自分は何を担うのか。
一度、自分の仕事を分解して、これからの働き方を整えてみる。
そこから見えてくるキャリアも、きっとあるのではないでしょうか。
