賃金の引き上げが、働く人にとって大切なテーマになっています。
物価が上がる中で、生活を守るためにも給与が上がることは必要です。
長く働き、経験を積み、成果を出してきたのであれば、それが処遇として評価されることも大切でしょう。
だから、賃金が上がること自体は歓迎すべきことだと思います。
ただ、「給料が上がれば、今の会社で働き続けたいと思えるのだろうか」と考えると、話は少し複雑になります。
給料は大切。でも、それだけではない
仕事を選ぶとき、給与はとても重要な条件です。
生活があります。
家族もいます。
将来への備えも必要です。
「お金ではない」と簡単に言ってしまうことはできません。
一方で、これまで多くの人のキャリアの話を聞いていると、
「給料にはそれほど不満はない。でも、このままでいいのかと思う」
という言葉を耳にすることがあります。
仕事内容に違和感がある。
責任だけが増えていく。
人間関係に疲れている。
自分の時間がほとんどない。
将来、この仕事を続けている姿が想像できない。
そうした状態では、給与が少し上がったとしても、違和感そのものがなくなるとは限りません。
人が仕事から受け取っているものは、給与だけではない
働くことで私たちが受け取っているものを考えてみると、実はいろいろあります。
収入。
時間。
経験。
人とのつながり。
社会との接点。
成長する機会。
誰かの役に立っているという感覚。
自分の居場所。
そして、ときには誇りや自信。
逆に、仕事によって失っているものもあります。
家族との時間。
自分のための時間。
健康。
心の余裕。
やってみたかったこと。
こうして考えてみると、「仕事の価値」は給与明細に書かれている金額だけでは測れないことがわかります。
40代、50代になると、仕事に求めるものも変わる
若い頃は、
「もっと収入を増やしたい」
「昇進したい」
「大きな仕事を任されたい」
ということが働く原動力だった人もいるでしょう。
でも、40代、50代になると少しずつ変化が起きます。
役職よりも、自分の得意なことを活かしたい。
収入が多少下がっても、自分の時間を増やしたい。
会社の中で上を目指すより、誰かの役に立つ仕事がしたい。
毎日会社に通うことより、場所や時間に縛られない働き方を選びたい。
もちろん、正解はありません。
大切なのは、以前の自分が大切にしていたものと、今の自分が大切にしているものは、同じとは限らないということです。
働く期間が長くなればなるほど、途中で仕事に求めるものが変わるのは自然なことだと思います。
企業側にも「賃金以外」の視点が必要になる
これは、働く人だけの話ではありません。
企業にとっても、賃金を上げることは人材を確保し、定着してもらうための重要な取り組みです。
ただ、賃金だけを上げれば人が残る、と考えるのも少し違うように思います。
上司との関係。
仕事の任せ方。
役割の明確さ。
本人の強みと仕事内容との相性。
成長できる環境。
家庭や生活とのバランス。
人が会社を離れる理由の中には、金額だけでは解決できないものがあります。
だからこそ、これから企業には「いくら払うか」と同時に、
その人が、どんな状態で働いているのか
を見る視点も必要になってくるのではないでしょうか。
「いくらもらえるか」と「どんな毎日を送るか」
賃金が上がることは大切です。
でも、もし今の仕事に少し違和感を感じているのであれば、給与だけを見て答えを出さなくてもいいと思います。
自分は仕事に何を求めているのか。
今の仕事から何を得ているのか。
逆に、何を失っているのか。
これからの10年、どんな一週間を過ごしたいのか。
そんな問いを持ってみると、「今の会社に残る」「転職する」という二択とは違う選択肢が見えてくることもあります。
給与は、仕事を選ぶ大切な条件です。
でも、
「いくらもらえるか」と同じくらい、「どんな毎日を送れるか」も大切なのではないでしょうか。
賃金引き上げのニュースをきっかけに、ときには自分にとっての「仕事の価値」を、金額以外のところからも見直してみる。
そんな時間があってもいいのかもしれません。
